“業務量を計る” と言うとどのようなイメージがあるでしょうか?
工場の改善に多く用いられたのはストップウォッチによる測定とビデオ撮影における時間の測定です。
この方法をホワイトカラーでも実践したという話を聞いたことがありますが、作業工程が決められている工場作業と作業工程がある意味 “人まかせ” でその日その日の行動が違う事務作業では測定方法は違い、実際に時間を計るのは非現実的です。
電話1本かかってくるだけで行動は変化しますし、測定されているとわかれば、いつもより頑張って行動してしまうかもしれません。もっとも多く用いられるのが毎日の行動を記入する方法です。1日の終わりにどの業務をどのくらいやったかを記入して集計します。
しかしここにも欠点があります。
まずは毎日記入することの負荷です。そして、数多くの業務に記入をさせるわけにはいかないので、業務をかなり粗く設定しているところがほとんどです。つまりかなり大雑把な記録となるわけです。
また、業務が新規に増えた場合は、各自の判断で項目を増やしたりすると、集計が不可能になります。
最近ではパソコンのログから測定する方法もありますが、業務は必ずしもパソコンを使用するとは限りません。パソコンを使わない業務は測定できないことになります。
そこで最近注目されているのが「推定比率法」という測定方法です。「推定比率法」とは、業務全体にかかった時間を逆算して、個別の業務にかかった時間を推定する調査方法です。
推定比率法のメリットは、実績を記入する時間がかからないため、測定にかかる工数を抑えられ手軽に業務量の可視化を行うことができる点です。測定における従業員の負担感も軽減できスピーディーに調査結果を得られます。
しかし記入者の主観によりますので、人によってバラつきがあるのがデメリットでもあります。筆者はもともとヒアリングで大まかな時間を聞いて、それを集計していました。
これもサンプリングの方法で、何人かをピックアップしたものを全体の時間とみなす方法です。
しかしあるとき、過去に失敗の経験があり誰もヒアリングに応じないというプロジェクト、という状況に直面しました。多分、このような状況の会社は多く見受けられるのではないでしょうか。
散々ヒアリングをされて、その結果何のアウトプットに繋がらなかった状況です。
しかも当時の私が従事したプロジェクトは、過去2度も失敗しており絶対にヒアリングができない状況でした。そこで、アンケート調査による業務調査を考えました。
あくまでも誰がどのような業務に従事しているかの調査なのですが、抜け漏れなく記入できるように、自分の業務の稼働が100%になるように記入してもらいました。この記入方法は、過去に遡って日単位、週単位、月単位などを記入してもらう方法です。
「昨日何をやったかも覚えていない状況で1年を振り返られるわけがない」そう思う人も多いと思います。
しかし、1日どのくらいやっているか、1か月にどのくらいやっているかを思い出すので、そこまで難しいことではありません。ただ、ここにはデメリットである記入者の主観によるバラつきが発生します。実は、バラバラの記入でもある程度のボリュームになると平均値に落ち着くというのが統計にあるそうです。
もしもそこまでのボリュームでなければ、個別に記入の確認をしてもいいかもしれません。これは闇雲にヒアリングすることではなく、目的が明確な質問なので応じてもらえます。業務を抜け漏れなく記入してもらう方法が「推定比率法」であったことに後で気が付き、業務量を測定する目的ではなかったのが、結果的に業務量を測定することができた、というお話です。
このことをきっかけに、業務ヒアリングをする前にこの調査を実施し、ヒアリング内容も絞り込むことで、必要最小限の負荷で業務状況を確認することができるようになりました。
ヒアリングができない絶体絶命の状態から大逆転した出来事でした。
ハリー